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心筋症は、愛犬や愛猫の健康を脅かす心臓病の一つです。この病気は早期にはほとんど症状が見られないため、飼い主様が気づいたときにはすでに進行していることが多いのが特徴です。
そのため、心筋症の早期発見と早期治療は、愛犬や愛猫の命を守るために欠かせません。
今回は、犬と猫に共通する心筋症の基本情報や症状、原因、診断方法、治療方法などを詳しく解説します。
■目次
1.心筋症とは
2.心筋症の症状
3.原因
4.診断方法
5.治療方法
6.予防法やご家庭での注意点
7.まとめ
心筋症とは、心臓の筋肉(心筋)に異常が生じ、心臓が正常に機能しなくなる状態を指します。
心筋症にはいくつかのタイプがありますが、犬では心筋が薄くなる「拡張型心筋症」が多く見られ、猫では心筋が厚くなる「肥大型心筋症」が一般的です。
拡張型心筋症は、心筋が薄くなることで心臓が拡張し、血液を効率的に送り出せなくなる病気です。主に大型犬に多く発生し、特にドーベルマンやグレートデーン、ゴールデンレトリバー、スパニエル種に見られます。
一方、肥大型心筋症は、心筋が厚くなることで心臓の内部空間が狭くなり、血液の流れが悪くなる病気です。特にメインクーンやラグドール、その他スコティッシュフォールド、アメリカンショートヘアなどの猫種に多く見られますが、日本猫にも多く発生します。
心筋症は、一度発症すると進行を抑える治療が必要であり、完治することは難しい病気です。
心筋症の初期段階では、ほとんど症状が見られないことが多いです。しかし、病気が進行するにつれて、以下のような症状が現れることがあります。
・元気がない
・動きたがらない
・食欲がない
・咳が出る
・呼吸が苦しそう
これらの症状は、心臓がうまく血液を送り出せなくなり、体全体に酸素が行き渡らなくなるために起こります。
また、猫の肥大型心筋症では、血液の循環が悪くなることで血栓ができやすくなります。特に「動脈血栓塞栓症」という状態になりやすく、血栓が後ろ足の血管に詰まって突然後ろ足が動かなくなり、最悪の場合は突然死することもあります。
こうした症状が見られた場合は緊急の為すぐに動物病院を受診し、適切な診断と治療を受けることが必要です。
<犬の場合>
犬の拡張型心筋症の原因は明確にはわかっていませんが、特定の犬種に多く発生することから遺伝的要因が関係していると考えられています。特にドーベルマンやボクサー、アイリッシュ・ウルフハウンド、ゴールデンレトリバーなどの大型犬種や、コッカー・スパニエルなどのスパニエル種で発症率が高いことが知られています。
また、栄養不足や特定のウイルス感染なども原因として挙げられることがありますが、主な原因は遺伝的なものとされています。
<猫の場合>
猫の肥大型心筋症の原因も、遺伝的要因が大きいとされています。特にメインクーン、アメリカン・ショートヘア、スコティッシュフォールド、ラグドールなどの特定の猫種で発症率が高いことが確認されています。
しかし、日本猫でも多く見られるため、遺伝だけでなくその他の要因も関与している可能性があります。具体的には、甲状腺機能亢進症などの内分泌疾患や、高血圧などが肥大型心筋症を引き起こすリスク要因とされています。
心筋症の診断は、主に以下の検査を通じて行われます。
・身体検査
動物の全体的な健康状態を評価し、心臓の異常を確認します。特に聴診器を使って心雑音や異常な心音を確認します。
・レントゲン検査
胸部のX線撮影を行い、心臓の大きさや形態、肺の状態を確認します。これにより心臓の拡大や肺水腫などの兆候を把握できます。
・心エコー検査
超音波を使って心臓の構造や機能を詳しく調べます。心筋の厚さや心室の拡張度、心臓の動きをリアルタイムで観察することができます。これにより、拡張型心筋症や肥大型心筋症の具体的な診断が可能です。
・血液検査
血液中の特定のマーカーを測定することで、心臓の状態や他の関連疾患の有無を確認します。
これらの検査を組み合わせて正確な診断を行い、適切な治療方針を決定します。
心筋症の治療は主に薬物療法を中心に行われます。一度発症すると完治は難しいため、治療の目的は病気の進行を抑え、症状を緩和することです。
以下は一般的な治療方法です。
・薬物療法:心筋症の進行を遅らせるために、ACE阻害薬やβ遮断薬などの薬が処方されます。犬の場合、比較的新しい薬であるピモベンダンがよく使用され、心臓の収縮力を高める効果があります。
また、利尿剤を併用して、体内の余分な水分を排出し、肺水腫などの症状を軽減することもあります。
・定期的な検査:定期的に心エコー検査やレントゲン検査を行い、心臓の状態をモニタリングします。これにより、薬の効果や病気の進行具合を把握し、治療方針を適宜見直すことができます。
・栄養管理:心臓に負担をかけないために、適切な栄養管理も重要です。塩分を控えた食事や、心臓に良いとされるサプリメントを取り入れることがあります。
心筋症は遺伝的要因が強いため、予防が難しい病気です。しかし、早期発見と早期治療が愛犬や愛猫の健康を守るためには非常に重要です。
まず、心筋症は初期段階では症状がほとんど見られないため、定期的に動物病院で健康診断を受けることが大切です。特に高齢の犬や猫は、少なくとも半年に一度、心臓の検査を受けるようにしましょう。
また、日常生活で愛犬や愛猫の行動や食欲、呼吸状態に変化がないか注意深く観察することも重要です。元気がない、動きたがらない、咳をするなどの症状が見られた場合は、すぐに動物病院を受診しましょう。
さらに、心臓に負担をかけないよう、ストレスの少ない環境を整えることも大切です。過度な運動や興奮を避け、穏やかに過ごせる環境を提供することで、愛犬や愛猫の健康を守ることができます。
心筋症は愛犬や愛猫にとって重大な健康リスクとなる病気ですが、早期発見と適切な治療によって、進行を抑え、快適な生活を送ることが可能です。飼い主様が日頃から健康状態を観察し、定期的な健康診断を受けることで、大切な家族の一員である犬や猫の命を守ることができます。
定期的な検査と早期治療を心がけ、心筋症に対する備えを万全にしておきましょう。
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