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網膜は目の奥にある薄い膜で、カメラのフィルムのように光の刺激を映像情報に変換し、視神経を通じて脳に送る役割を担っています。
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進行性網膜萎縮(PRA)は、この網膜が徐々に薄くなり、最終的に失明する病気です。特にミニチュア・ダックスフンドやトイ・プードルでの発生が多く見られます。
今回は犬の進行性網膜萎縮について、症状や治療方法、予防方法などを詳しく解説します。
■目次
1.進行性網膜萎縮になったときの症状
2.原因
3.診断方法
4.治療方法
5.予防法やご家庭での注意点
6.まとめ
進行性網膜萎縮は視力が徐々に低下する病気で、進行のスピードは犬によって異なります。一気に失明する場合もあれば、数年かけて徐々に見えにくくなる場合もあります。
初期の異変としては、暗い場所で物にぶつかりやすくなる、歩く速度が遅くなる、夕方の散歩を嫌がるなど、暗所での視覚障害が見られます。
進行するにつれて、明るい場所でも見えにくくなりますが、においや音、記憶などを頼りに日常生活を問題なく送ることができるケースも多いため、かなり進行するまで飼い主が気づかないこともあります。
はっきりとした原因はわかっていませんが、遺伝が関与していると考えられています。
特にミニチュア・ダックスフンドに多く見られますが、トイ・プードル、ヨークシャー・テリア、チワワ、パピヨンなどの小型犬や、アメリカン・コッカー・スパニエル、ミニチュア・シュナウザーなどでも発生が多いです。ただし、どの犬種でも発症する可能性があります。
問診や視診、触診を行ったうえで、以下の検査を行います。
<視覚検査>
威嚇瞬き反射、対光反射検査、迷路試験などを通じて、視覚情報や光への反応を確認します。
<眼底検査>
瞳孔を開く目薬を使用し、目に光を当てて網膜の視神経乳頭の状態や網膜、眼底血管の変化を確認します。
<網膜電図(ERG)>
網膜電図は、心電図の目バージョンのようなもので、網膜に光を当てて刺激することにより発生する電気信号を計測し、網膜や神経に異常がないかを評価します。
診断の補助として遺伝子検査を行う場合もあります。
残念ながら、現在の獣医療で進行性網膜萎縮を治す有効な治療法はありません。
この病気の犬には、網膜の変性を遅らせる効果を期待して、アスタキサンチンなど抗酸化作用のあるサプリメントや、ビタミン製剤などの使用をお勧めしています。
進行性網膜萎縮に対する確立された予防法はありませんが、特に発症リスクが高いとされるミニチュア・ダックスフントなどの犬種については、早期発見を目指して定期的な眼底検査をお勧めします。
また、暗い場所での物へのぶつかりやすさや、夕方の散歩を嫌がるなどの行動の変化に注意し、これらが見られた場合は早めに獣医師に相談してください。
なお、この病気は子供に遺伝するため、進行性網膜萎縮と診断された犬は繁殖させないようにしましょう。
視力が低下している、または失明してしまった犬との生活においては、安全対策が必要です。家の中で犬が安全に過ごせるように、隙間を塞ぐ、家具にぶつからないようにする、高い場所の物が落ちてこないようにするなど、環境を整えてあげることが大切です。
進行性網膜萎縮(PRA)は、主に遺伝的要因による病気で、特定の犬種に多く見られます。現在のところ、完全な治療方法はなく、早期発見のために定期的な眼底検査が推奨されています。
日頃から愛犬の様子に注意し、もしも気になる症状や様子がある場合には動物病院を受診しましょう。
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