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犬と猫の緑内障について|眼圧が異常に高くなり、失明に繋がる可能性も2024.04.23

緑内障は眼房水という眼球の中の水分が溜まり、眼圧が上がる病気です。眼圧が上がることで目の奥にある視神経に圧迫され、それにより視野が狭くなり、最悪の場合、失明に至ることがあります。

このため、早期に適切な診断と治療を開始することが極めて重要とされています。

犬の緑内障には原発性と他の目の病気から起こる続発性がありますが、猫ではほとんどが続発性と言われています。

 

今回は犬や猫の緑内障について、症状や治療方法、予防方法などを詳しく解説します。

 

緑内障についてはこちらでも解説しています

 

■目次
1.緑内障とは
2.緑内障になったときの症状
3.緑内障になる原因
4.診断方法
5.治療方法
6.予防法やご家庭での注意点

 

【緑内障とは】

緑内障は、眼圧が異常に高くなることで引き起こされる目の病気で、未治療の場合、視神経を損傷して視野が狭くなり、最悪の場合失明に至る可能性があります。

 

そもそも眼圧とは、眼球の中を満たしている水分(眼房水)の量により決まります。

眼房水は眼球の形状を維持し、栄養を供給する役割を果たしています。網膜の後ろ、水晶体の前に位置する毛様体から産生され、眼球を通って流れ、主に虹彩と角膜の間にある隅角(角膜と虹彩が接する部分)で排出されます。

この流れがスムーズに行われることで、眼内圧は一定の範囲内に保たれます。

 

しかし、毛様体が過剰に眼房水を産生したり、隅角での排出が妨げられたりすると、眼内圧が上昇します。緑内障の発症には、このような眼房水の流れのバランスが大きく関与しています。

©️来夢来人https://www.civillink.net/fsozai/eye.html

 

【緑内障になったときの症状】

緑内障には急性と慢性があります。

急性は突然強い症状が出ますが、慢性の場合は徐々に進行するため、変化に気付きにくいという特徴があります。

緑内障を疑うべき症状には以下のようなものがあります。

 

涙が増える:眼圧の上昇による刺激で涙の分泌が増えます。

まぶたが痙攣する:眼圧の上昇によってまぶたが痙攣することがあります。

目が充血する:眼内圧の上昇により、眼球の血管が拡張し、充血します。

目の表面が白く濁る:眼房水の流れが滞ることで、角膜が濁り始めることがあります。

目を細める:目に痛みや不快感がある場合、頻繁に目を細めるようになります。

 

症状が進行し、眼圧が高い状態が続くと、数日で視神経に障害が起こり目が見えなくなることがありますこれによって、よくぶつかる、寝ている時間が増えるなどの行動の変化も見られます。

さらに、瞳孔の散大や眼球の突出(牛眼)、目の奥が緑色に見える現象も緑内障の典型的な症状です。

 

【緑内障になる原因】

緑内障の原因は、単独で発生する「原発性緑内障」と、他の目の病気や怪我が原因となる「続発性緑内障」の2種類があります。

 

原発性緑内障の原因には、眼房水の代謝異常、流出路の形成異常などがあります。

また、遺伝的な要因も考えられており、犬では柴犬、シベリアンハスキー、アメリカンコッカースパニエル、シーズーが好発犬種とされており、猫ではシャム、ペルシャ、バーミーズが好発猫種として報告されています。

 

続発性緑内障は、他の目の病気や怪我など外因性の要因によって引き起こされます。

ぶどう膜炎、白内障、水晶体脱臼、腫瘍などが、眼房水の正常な流れを妨げることで緑内障を引き起こします。

特に、進行した白内障による水晶体脱臼は、眼房水の排出路を物理的に塞ぎ、急激な眼圧上昇を引き起こす一般的な原因です。

 

【診断方法】

問診や視診、触診によって緑内障が疑われる場合、以下のような検査を行うことで診断をします。

 

<眼圧測定>

最も基本的な検査であり、眼内圧の測定を行う検査です。眼圧の上昇が確認された場合、緑内障の可能性が高まります

 

<視覚検査>

威嚇瞬き検査(手をかざすと瞬きをするか)、対光反射検査(光を入れると瞳孔が縮むか)、迷路試験(ものにぶつからずに歩けるか)などを通じて、視覚反応を評価します。

 

<スリットランプ検査(細隙灯顕微鏡検査)>

細い光を当てて角膜と水晶体の断面を詳しく調べますまた、視神経の状態や網膜の変化も評価できます。

 

<隅角検査>

房水の排出経路である隅角の状態を詳しく調べます。隅角が閉じているか、形態に異常がないかなどを確認し、緑内障のタイプ(開放隅角緑内障か閉塞隅角緑内障か)を特定します。

 

<眼底検査>

視神経乳頭の状態や網膜、眼底血管の変化を観察します。この検査により、視神経の損傷の有無や程度、網膜の健康状態を評価できます。

 

<超音波検査>

水晶体脱臼や眼内腫瘍、網膜剥離などの内部異常がないかを確認します

当院の眼底検査についてはこちらでも紹介しています

 

【治療方法】

緑内障の治療には内科治療と、外科治療があります。

 

内科治療>

眼圧を下げるための点眼薬や内服薬を併用します。これには、眼房水の生成を減少させるものや、眼房水の排出を促進するものがあり、一般的には定期的に使用する必要があります。

 

外科治療>

緑内障の外科治療は、その進行度と状態、特に視覚が保たれているかどうかによって異なる治療方法が選択されます。

 

■視覚がある場合の治療

 

前房内シャント設置術

房水の自然な流れが阻害されている場合に、新たな出口を作り出して房水の流れを改善する手術です。これにより、眼内圧が正常化し、緑内障の進行を遅らせます。

 

経強膜毛様体光凝固手術(半導体レーザー)

毛様体(房水を産生する部分)をレーザーで凝固させ、房水の産生を減少させることで眼内圧を下げる手術です。これにより、目の痛みを軽減し、点眼薬からの離脱や目の形状の維持も期待できます。

 

■視覚がない場合の治療

視覚を喪失してしまった場合は眼圧による痛みをコントロールし、生活の質を改善することが第一の目的となります。

 

ゲンタマイシン硝子体内注入術

眼内にを注入して毛様体を破壊し、房水の産生を減少させることで眼内圧をコントロールします。これは、眼圧による痛みを和らげ、生活の質の向上を目指す治療です。

 

シリコンインプラント挿入術

眼球の形状を保つために、眼内にシリコンボールを挿入する手術です。これにより、眼球を温存しつつ、外見的な問題を最小限に抑えます。

 

眼球摘出術

痛みをコントロールするためや、腫瘍が原因で発生した緑内障の場合に、眼球を摘出することがあります。特に、腫瘍が他の体部への転移を防ぐために行われます。

 

緑内障の治療における成功事例と実績をご覧ください。

手術実績の詳細はこちらから

 

【予防法やご家庭での注意点】

緑内障の予防には限界がありますが、早期発見と早期治療が非常に重要です。飼い主様は日頃から愛犬・愛猫の目の健康に注意を払い、異変を感じたらすぐに専門の獣医師に相談してください。

 

■当院の眼科に関連する病気はこちらで解説しています。

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