くまちゃん動物病院からのお知らせNEWS

犬と猫の高血圧、見逃していませんか?|気づきにくい症状と合併症2025.07.17

「高血圧」と聞くと、人の病気というイメージをお持ちの方も多いかもしれませんが、実は犬や猫にも高血圧症があり、決して珍しい病気ではありません。

この病気のやっかいな点は、初期にはほとんど症状が見られず、気づかれにくいことです。
そのまま進行すると、目や腎臓、心臓、脳など大切な臓器に影響を及ぼすことがあるため、注意が必要です。

今回は、犬と猫の高血圧症について、考えられる原因や現れやすい症状、そして定期的な検査の大切さについて解説します。

■目次
1.犬や猫の高血圧とは?
2.主な原因
3.見逃されがちな症状と合併症
4.高血圧の診断方法と定期検査の重要性
5.治療と日常ケア
6.まとめ

 

【犬や猫の高血圧とは?】

高血圧とは、血管の中を流れる血液の圧力(血圧)が異常に高くなっている状態を指します。

「高血圧」という言葉を聞くと、人の病気を思い浮かべる方が多いかもしれませんが、犬や猫にも高血圧症があり、特に年齢を重ねた場合に見られやすい傾向があります。
そのため、老犬・老猫のケアにおいては見逃せない大切なチェックポイントのひとつです。

動物病院での血圧測定では、以下の場合に高血圧と診断されることが多くなっています。

・収縮期血圧(上の血圧)が140〜160mmHg以上
・拡張期血圧(下の血圧)が95mmHg以上

高血圧症は、ゆっくりと進行するうえに症状が現れにくいため、気づいたときにはすでに合併症が進行していたというケースも少なくありません。

 

【主な原因】

犬や猫の高血圧には、いくつか代表的な原因があります。
犬の場合は、クッシング症候群(副腎皮質機能亢進症)や慢性の腎臓病・心臓病が関係していることが多く、猫では甲状腺機能亢進症や慢性腎臓病・心臓病が高血圧の引き金になることがよくあります。

また、年齢を重ねることで血管の弾力が失われると、血圧が上がりやすくなるため、加齢も大きなリスクのひとつです。
さらに、肥満傾向のある犬や猫では、血圧の上昇が起こりやすくなるため注意が必要です。

そして意外と見逃されがちなのが、ストレスや生活環境の変化による影響です。
たとえば、来客が続いたり、引っ越しや模様替えなど環境が変わったりすると、一時的に血圧が上がることもあります。
このような一時的な上昇が続いてしまうと、慢性的な高血圧につながる可能性もあるため、ストレスケアも大切な予防のひとつと言えるでしょう。

 

【見逃されがちな症状と合併症】

犬や猫の高血圧症は、初期のうちはほとんど症状が現れないことが多く、見逃されやすい病気です。
そのため、「なんとなくいつもと様子が違う」といった飼い主様のちょっとした気づきが、早期発見のきっかけになることも少なくありません。

以下のような変化が見られた場合、高血圧のサインである可能性があります。

・落ち着きがなくなる、興奮しやすくなる
・家具や壁にぶつかるなど、視力に異変がある
・食欲が落ちる、体重が減ってきた
・元気がない、散歩や遊びを嫌がるようになる

これらの症状は、年齢による変化と区別がつきにくいこともありますが、実は高血圧が関係している場合があります。

また、高血圧が進行すると以下のような深刻な合併症を引き起こす可能性もあります。

・失明
・脳出血
・心不全
・腎機能の低下

特に目や脳に関わる症状は急激に悪化するケースがあり、早期に気づけるかどうかが大きな分かれ道になります。
日頃から愛犬・愛猫の様子をよく観察し、少しでも気になることがあれば、早めの受診をおすすめします。

 

【高血圧の診断方法と定期検査の重要性】

犬や猫の高血圧を見逃さないためには、正しい診断と定期的な検査がとても大切です。
血圧の測定は、人と同じように専用の機器を使って行います。
尾や前足などに小さなカフ(加圧帯)を巻いて測定する方法で、体に負担をかけずに行える検査です。

ただし、特に猫の場合は環境の変化に敏感で診察時に緊張してしまい、一時的に血圧が上がることがあります。そのため、正確な診断には複数回の測定と、他の検査と組み合わせて評価することが大切です。

高血圧の診断や原因の特定には、以下のような検査が併せて行われることがあります。

血液検査・尿検査:全身の健康状態を確認
眼底検査:目の奥の血管や網膜の状態をチェック
心臓や腎臓の超音波検査:高血圧の原因となる病気がないか確認

 

特に、慢性腎臓病や甲状腺機能亢進症など、高血圧の原因となる病気を抱えている愛犬・愛猫の場合は、定期的なモニタリング(継続的な検査)が欠かせません。
目安としては、7歳を過ぎた中高齢の犬や猫、または持病がある場合には、半年〜1年に一度の血圧チェックを習慣化していくことが理想的です。

 

【治療と日常ケア】

高血圧症に対する治療では、原因となる病気の治療と並行して、「血圧そのものを下げること」も大切な目的になります。
高血圧を抑えるための治療薬としては、主に降圧剤が使用されます。

ただし、お薬を飲ませるだけでは十分とは言えません。
日常生活の中でのケアが、治療の効果をより高めるための大切なカギになります。

 

<ご家庭でできる高血圧ケアのポイント>
✅ストレスをできるだけ減らし、静かで落ち着いた環境を整える
✅塩分を控えめにし、栄養バランスの取れたフードを選ぶ
✅肥満を防ぎ、適切な体重を維持する
✅毎日の水分摂取量や排尿の状態、食欲、元気の様子をこまめにチェックする

特にシニア期に入った犬や猫の場合は、食事や運動などのちょっとした変化が血圧にも影響を与えることがあります。
だからこそ、「なんとなくいつもと違うかも?」という小さな変化を感じたら、早めに獣医師に相談することが大切です。

 

【まとめ】

犬や猫の高血圧症は、症状が目立ちにくいため、気づくのが遅れやすい病気です。
ですが、早い段階で気づいて適切に対応すれば、高血圧だけでなく、視力や腎臓、心臓などの大切な臓器を守ることができます。
日々のちょっとした変化に気づくこと、そして定期的な検査を受けることが、病気の早期発見と健康を守る第一歩です。
もし気になる症状がある場合は、早めに当院にご相談ください。

 

■関連する記事はこちらです
犬や猫の肺高血圧症について|症状・診断・治療法を解説
犬の腎臓病とは?|愛犬の健康を守るための早期発見とケア方法

 

犬と猫の眼のことなら新潟県新潟市の動物病院 くまちゃん動物病院

診察案内はこちらから

Copyright(c) くまちゃん動物病院 All Rights Reserved.

▲ページトップへ