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犬と猫の肝臓腫瘍|見逃しがちな初期症状と治療法を徹底解説【獣医師監修】2025.01.07

肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれるように、異常があっても初期症状が現れにくい臓器です。そのため、異変に気づくのが遅れやすく、肝臓腫瘍も初期段階では目立った症状が出ないことが特徴です。このため、発見が遅れてしまうケースが少なくありません。

この病気は特に高齢の犬や猫に発症しやすい傾向があります。そのため、日頃から健康状態を注意深く観察し、定期的に検査を受けることが非常に重要です。

症状が進行すると、お腹の膨張や、硬いしこりに触れるといった異変が現れることがあります。ただし、これらの症状が出た場合には、すでに病気が進行していることが多いため、早めの受診をお勧めします。

今回は、肝臓腫瘍についての基礎知識から、早期発見や治療法までを詳しくご紹介します。

肝臓腫瘍

■目次
1.肝臓腫瘍の種類と特徴
2.原発性と転移性の違い
3.発症しやすい年齢について
4.見逃してはいけない症状
5.診断方法と検査
6.治療法
7.予防と早期発見のために
8.まとめ

 

【肝臓腫瘍の種類と特徴】

肝臓腫瘍には、大きく分けて「良性腫瘍」と「悪性腫瘍」の2種類があります。
良性腫瘍は成長がゆっくりで、周囲の組織や臓器に大きな悪影響を及ぼすことは少ないのが特徴です。

一方、悪性腫瘍は急速に成長し、周囲の組織を破壊したり、他の臓器に転移したりするリスクがあります。

悪性腫瘍が進行すると犬や猫の体力を大きく消耗させ、全身状態にも深刻な影響を及ぼす可能性があるため、早期発見と適切な治療が重要です。

 

【原発性と転移性の違い】

肝臓腫瘍には、「原発性」と「転移性」という2つのタイプがあります。

<原発性肝臓腫瘍>
肝臓そのものから発生する腫瘍を指します。代表的なものに、肝細胞が腫瘍化した「肝細胞癌」があります。

 

<転移性肝臓腫瘍>
他の臓器で発生した腫瘍が肝臓に転移してできる腫瘍です。原発性肝臓腫瘍の約2.5倍多いとされています。また、元の腫瘍がすでに進行していることが多いため、治療が難しくなるケースが多くみられます。

 

【発症しやすい年齢について】

肝臓腫瘍は、特に高齢の犬や猫で発症する傾向があります。
愛犬や愛猫が高齢の場合には、定期的な健康診断や日々の観察をより心掛けることが大切です。

 

【見逃してはいけない症状】

肝臓腫瘍の初期段階ではほとんど症状が現れないことが多く、飼い主様が異変に気づくのは難しいかもしれません。

しかし、病気が進行すると、以下のようなサインが見られることがあります。これらの症状が見られた場合は、早めに獣医師に相談しましょう。

・食欲不振
普段は食欲旺盛な場合でも、腫瘍によって体調が悪化すると、急に食事を摂らなくなることがあります。

・体重減少
肝臓の機能低下により体重が減少し、体力も低下することがあります。

・黄疸
肝臓の働きが悪化すると、皮膚、歯ぐき、目の白い部分が黄色くなることがあります。

・元気がない、だるそうにしている
いつもより活動的でなく、疲れやすそうに見える場合があります。

・お腹の膨張
腫瘍が大きくなることでお腹が膨らんで見えることがあります。触ると硬いしこりを感じることもあります。

 

【診断方法と検査】

肝臓腫瘍の診断は、以下の複数の検査を組み合わせることで、より正確な判断が可能になります。

・身体検査と問診
まず、飼い主様から食欲や行動の変化などについて詳しく問診を行います。
その後、体重や皮膚、歯ぐきの色を確認し、触診によって肝臓の腫れや硬さを調べます。この段階で、しこりの有無が分かる場合もあります。

 

・血液検査
血液検査では、肝臓の健康状態を確認するために、ALTやALPといった肝酵素の数値を測定します。これらの数値が高い場合、肝機能の異常が疑われるため、さらに詳細な検査が必要になることがあります。

また、ビリルビン値を調べることで、黄疸の有無や腫瘍の進行度を把握することも可能です。

 

・超音波検査

超音波検査では、肝臓の内部構造を詳細に確認できます。この検査により、腫瘍の有無や大きさ、場所を正確に把握することが可能です。

特に肝臓腫瘍の場合、腫瘍が肝臓のどの部分に発生しているかが治療方針を決定する上で重要なため、超音波検査は欠かせない検査のひとつです。

 

・レントゲン検査
レントゲン検査では、肝臓の大きさや肺など他の臓器への転移がないか、また心臓に異常がないかを確認します。

肝臓腫瘍がある場合、多くは肝臓が腫大している様子が画像で確認されます。

 

・CT検査
当院ではCT検査も可能であり、腫瘍の大きさや形状、周囲の臓器との位置関係を詳細に把握することができます。

CTは、X線画像を多角的に撮影し、3Dの断面図を作成するため、他の検査よりも精密な画像が得られるのが特徴です。特に、転移の有無や周辺の血管との関係を明確にすることができるため、手術計画や治療方法を決定する際に重要な役割を果たします。

当院のCT検査についてはこちらで解説しています

 

・細胞診/組織検査
必要に応じて、腫瘍部分の細胞を採取し、顕微鏡でその状態を確認します。
細胞診や組織検査を行うことで、腫瘍が良性か悪性かを判断でき、治療計画を立てる際に重要な情報を得ることができます。

 

【治療法】

肝臓腫瘍の治療法は、腫瘍の種類や進行度、犬や猫の体調によって異なります。
以下に主な治療方法を説明します。

<外科手術>
良性腫瘍や肝臓の一部に限られた悪性腫瘍の場合、外科手術で腫瘍を切除する治療が選ばれることがあります。肝臓は再生能力が高く、一部を切除しても機能を維持できるため、手術後の回復が期待されます。

ただし、手術には全身麻酔が必要なため、年齢や体調を考慮して慎重に判断する必要があります。

 

<化学療法(抗がん剤治療)>
悪性腫瘍で転移のリスクがある場合には、抗がん剤を用いた化学療法が行われることがあります。化学療法は腫瘍の成長を抑え、病気の進行を遅らせたり、症状を和らげたりする目的で実施されます。

ただし、肝臓腫瘍に対する抗がん剤の効果は限定的であり、副作用が出る場合もあるため、愛犬や愛猫の体力や健康状態を考慮しながら慎重に進めることが必要です。

 

<放射線治療>
状況によっては、放射線治療が選ばれることもあります。この治療法では、放射線を用いて腫瘍の細胞を破壊する方法で、手術が難しい部位や体力的に手術が困難なケースで適用されることが多いです。

放射線治療は、抗がん剤治療と同様に、症状の進行を抑えながら体調を管理する方法のひとつです。

 

<緩和ケア>
病気が進行して治療が難しい場合には、緩和ケアに重点を置く選択肢もあります。
緩和ケアでは、痛みや不快な症状を和らげることで、生活の質をできるだけ保ちながら過ごせるようサポートします。

また、痛みの管理に加え、ストレスを軽減するために、リラックスできる環境を整えることも重要です。

 

【予防と早期発見のために】

肝臓腫瘍を完全に予防することは難しいですが、早期発見とリスク軽減に努めることがとても重要です。早期発見できることで、より根治の可能性が高まります。
以下のポイントを意識して、愛犬や愛猫の健康管理を行いましょう。

<定期検査を受ける>
肝臓腫瘍は初期症状が分かりにくいため、定期的な健康診断が大切です。
血液検査、超音波検査、レントゲン検査などを行うことで、早期の異常発見や腫瘍の進行状況を把握しやすくなります。年齢や体調に応じて検査を計画しましょう。

 

<生活習慣を見直す>
健康を維持するために、生活習慣を見直してみましょう。

バランスの取れた食事を与え、適度な運動を取り入れることで、愛犬や愛猫の健康を保つことができます。また、体重管理も重要なポイントです。

 

<日常的な観察を徹底する>
日常生活でも、次のようなポイントに注意し、異常を早めに見つけることが大切です

食欲の変化や体重減少
目や皮膚の黄ばみ(黄疸)
疲れやすさや活動量の低下
お腹の膨張感や触れたときの違和感

 

【まとめ】

肝臓腫瘍は、早期発見と適切な治療が大切です。
定期的な健康診断を受けることで、早期に異常を発見し、愛犬や愛猫の健康を守ることができます。

また、生活習慣の見直しや年齢に応じたケアも健康維持には欠かせません。
日々の観察を欠かさず、些細な変化を見逃さないことが、愛犬や愛猫の健康を支える大切な一歩となります。

もし愛犬や愛猫の健康に関して気になることがありましたら、ぜひ当院にご相談ください。

 

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