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「最近、呼吸が荒くなったような気がする…」「いつも元気だったのに、動きたがらなくなった」このような変化があると、飼い主様にとって大きな不安となるかもしれません。
犬や猫の肺高血圧症は、心臓や呼吸器の疾患と深く関係している病気で、早期発見と適切な治療が重要です。初期段階では症状が現れにくいことが多いですが、そのまま放置すると呼吸困難や意識低下といった深刻な状態に至る可能性があります。
愛犬や愛猫の健康を守るためには、定期的な健康診断や小さな体調の変化を見逃さないことが大切です。
今回は、犬や猫の肺高血圧症について、症状や診断方法、治療法について詳しく解説します。
■目次
1.肺高血圧症とは?
2.見逃してはいけない初期症状
3.診断方法と検査について
4.治療方法
5.日常のケアと健康管理のポイント
6.定期的な健康診断の重要性
7.まとめ
肺高血圧症とは、肺動脈内の血圧が異常に高くなる病気です。この状態では、肺へ血液を送る肺動脈に強い圧力がかかり、心臓や肺に大きな負担がかかることで全身の機能に影響を及ぼす恐れがあります。
肺高血圧症の原因としては心臓病や呼吸器の疾患が挙げられ、特に右心不全や慢性的な気管支疾患、肺疾患(特に短頭種)、などが深く関係しているケースが多いとされています。また、加齢とともに発症リスクが高まる傾向も見られます。
肺高血圧症は初期段階では症状が現れにくく、気づかれないことも多い病気ですが、早期に発見することで治療の効果が高まり、予後の改善が期待できます。
肺高血圧症は初期段階では症状が目立たないことが多く、見過ごされやすい病気です。しかし、進行するにつれてはっきりとした症状が現れるようになります。
ここでは、飼い主様が注意すべき初期症状から進行期の症状までを段階的に説明します。
<初期症状>
初期段階では元気がない、運動を嫌がるといった「運動不耐性」が見られることがあります。例えば、以前は散歩が大好きだった犬が途中で疲れて座り込むようになった場合は注意が必要です。
また、呼吸が浅く速いと感じることもありますが、これらの症状は目立ちにくいため、普段の様子と比べて変化に気づくことが大切です。
(目安:安静、寝ている時の呼吸数 10~35回/分)
<中期の症状>
症状が進行すると、咳や息切れが目立つようになります。呼吸困難とまではいかなくても、興奮したときや運動後に呼吸が荒くなることがあります。
特に猫の場合、咳をすること自体が珍しいため、咳が見られる場合は肺高血圧症の可能性を疑う必要があります。
<進行期の症状>
病気が進行すると、呼吸困難が現れることがあります。安静にしている状態でも呼吸が荒くなるほか、チアノーゼ(舌や歯茎が青紫色になる症状)や失神が見られることもあります。これらは肺高血圧症が重度に達しているサインであり、早急な診察が必要です。
肺高血圧症は早期段階での発見が難しい病気ではありますが、普段から体調を確認し、少しでも異変を感じた場合は、早めに獣医師に相談することが大切です。
肺高血圧症の診断には、以下のようなさまざまな検査が行われます。
・問診と身体検査
問診を通じて運動を嫌がる様子や呼吸の変化、咳の頻度などを確認します。
また、聴診により心臓や肺の音に異常がないかを確認することも重要です。
・レントゲン検査
レントゲンを使用して、肺や心臓の状態を調べます。心臓が肥大している場合や肺に水が溜まっている兆候が見られる場合は、さらに詳しい検査が必要になることがあります。
・心エコー検査
心臓超音波(エコー)検査は、肺高血圧症の診断で特に重要な検査です。心臓の壁の厚さや血流を調べることで、肺動脈の圧力を予測し、肺高血圧症の有無や重症度を確認します。
・血液検査
血液検査では、炎症の有無や臓器の機能、酸素の運搬能力などを確認します。
特に肺高血圧症が疑われる場合は、血清重炭酸塩(血液内の二酸化炭素量)を測定して、病気による影響を詳しく調べます。
・CT検査
より詳細な画像が必要な場合や、病気の確定診断を行う際にはCT検査が用いられることがあります。この検査には麻酔が必要なため、獣医師がリスクを十分に考慮したうえで実施を判断します。
これらの検査を組み合わせることで、肺高血圧症の早期発見が可能となり、適切な治療方針を決定することができます。
犬や猫の肺高血圧症の治療では、症状を和らげ、生活の質を向上させることを目的に、以下の方法が中心となります。
<酸素療法>
呼吸困難が見られる場合に実施される治療法です。酸素を体内にしっかり供給することで、心臓や肺への負担を軽減します。
酸素療法は動物病院で行われることが多いですが、必要に応じてレンタル酸素室を利用し、自宅で酸素ケアを行うこともあります。
<血管拡張薬の使用>
血管を広げる薬(血管拡張薬)を使用することで、血流が改善され、肺や心臓への負担を軽減します。この治療は、血圧を適切に管理するうえで重要です。
<利尿薬>
肺高血圧症の影響で体内に水分が溜まる場合、利尿薬を用いることもあります。
利尿薬の使用により、体内の余分な水分を排出し、心臓や肺の負担を和らげます。
<基礎疾患の治療>
肺高血圧症は心臓病や呼吸器疾患など、他の病気が原因となることが多いため、基礎疾患の治療が欠かせません。例えば、慢性気管支炎や心臓病が原因の場合、それぞれに適した治療が行われます。
肺高血圧症は完治が難しい病気ですが、治療を継続することで症状の緩和が期待できます。
肺高血圧症を持つ犬や猫の健康を維持するには、日常生活での配慮と定期的な健康チェックが欠かせません。ここでは、飼い主様が実践できるケア方法や健康管理のポイントについてご紹介します。
・ストレスの少ない環境づくり
ストレスや興奮は呼吸を乱し、症状を悪化させることがあります。静かでリラックスできる環境を整え、できるだけ刺激を避けるように心がけましょう。
・適度な運動と体重管理
運動は体力維持に役立ちますが、無理のない範囲で行うことが重要です。短い散歩や軽い遊びにとどめ、息が荒くなったらすぐに休ませましょう。
また、肥満は心臓や肺に負担をかけるため、適切な体重を維持することが大切です。獣医師と相談しながらバランスの取れた食事や運動計画を立ててください。
・温度と湿度の管理
肺や心臓への負担を軽減するためには、室内環境の管理も必要です。エアコンや加湿器を活用し、室温や湿度を適切に管理しましょう。目安として、室温は20~25℃、湿度は40~60%が推奨されます。
・感染症予防
呼吸器の健康を守るためには、感染症の予防が欠かせません。犬や猫に適した予防接種を受けて感染症のリスクを減らすことが、肺高血圧症の進行抑制にもつながります。
肺高血圧症は初期症状が分かりにくい病気のため、定期的な健康診断が欠かせません。
一般的には半年から1年に1回の検診が推奨されますが、高齢の犬や猫、心臓疾患がある場合はより頻繁な検査が必要です。
犬や猫の肺高血圧症は、早めに発見して治療を始めることが大切な病気です。日々のケアや定期的な健診を心がけることで、異変に早く気づき、迅速に対応することができます。
少しでも気になる症状や変化があれば、どうぞお気軽に当院にご相談ください。
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